写真・図版
芝野虎丸十段との二冠同士の戦いを制し、三冠に復帰した井山裕太王座=30日、東京・市ケ谷の日本棋院

 ノーベル化学賞の受賞が決まったデミス・ハサビス氏が率いるディープマインド社開発の「アルファ碁」は2016年3月、当時の世界最強棋士のひとり、韓国の李世乭九段を4勝1敗で圧倒した。「コンピューターが囲碁で人間を凌駕(りょうが)するには10年かかる」といわれた当時、棋界は衝撃を受けた。

 アルファ碁VS.李から1カ月後、日本囲碁界では井山裕太・現三冠は前人未到の七冠独占を遂げた。しかしAIと人間の打法には隔絶とした差があった。AIは人間界で理論上悪いとされた手を次々に繰りだし、世界のトップ棋士を打ち負かした。

 現在、人間と囲碁AIの差はどれだけあるのか。「世界のトップ棋士でもAI相手に二子ではたいへん」と井山。「二子」とは、下手が上手からハンディをもらう対局だ。棋士同士ではありえないハンディをもらっても勝つのは容易ではないという。

 彼我の差を埋めるべく、棋士はAI研究にのめり込んだ。井山もそのひとりだ。人間が太古から磨いてきた囲碁理論が破壊され、その再構築に苦しんだ。「(囲碁の技術が)人間だけでやっていたのではたどりつけないところに来ているのは確か。しかしAIが人間よりどこまで先に行っているのかはわからない。囲碁の真理にどこまで近づいているのかもわからない」

 AIの強さとはどこにあるの…

共有